【Part 3】ハイランドをめぐる魔法の旅: ジャコバイト号でハリーポッターの世界を体験
'Jacobite Steam Train Glenfinnan Viaduct'. VisitScotland / Kenny Lam
映画『ハリー・ポッター』シリーズに登場する列車・ホグワーツ特急が、実はスコットランドで現役の蒸気機関車にルーツを持つことをご存知でしょうか。
前回までの記事では、ハリー・ポッターの世界を通して、スコットランドの首都・エディンバラの魅力や、秘められた魔法の歴史をご紹介しました。
前回までの記事はこちらから
【Part 1】エディンバラの魔法：ハリーポッター・スポットを紹介
【Part 2】エディンバラの歴史: ハリーポッターの世界を紐解く
今回の記事はエディンバラを離れ、ハイランド地方へと足を延ばします。まるでホグワーツ特急に乗りこんだ気分で、美しいハイランド地方をめぐる魔法の旅にご案内します。実際の列車の運行ルートをたどり、魅力的な街々をめぐる旅へと出発しましょう！
ホグワーツ特急とは？
「ホグワーツ特急」とは、ハリー・ポッターシリーズに登場する特別な列車です。主人公たちは、魔法学校である「ホグワーツ」へ向かうために、ロンドンのキングズ・クロス駅の9¾番線からこの特急に乗ります。その黒と赤の車体はアイコニックで、レトロで可愛らしい雰囲気を醸し出しています。
ハリー・ポッターシリーズにおいて、ホグワーツ特急は特別な存在感を放ちます。物語の中で、ハリーが初めて友達を作る場所であり、ルーピン教授に出会う場所でもあります。また、ディメンターが現れる場面も列車内で起こり、後に物語に重要な役割を果たす人物や生き物との出会いの場としても機能しています。
孤児となったハリーのダーズリー家での辛い生活を考えると、ホグワーツ特急は単なる通学手段ではなく、ハリーが苦しみから脱出し、心からくつろげるホグワーツへ旅立つことを象徴する存在でもあるのです。
また、ホグワーツ特急の旅には心が躍ります。ホグワーツへの道中、ハリーとロンが車内販売で手に入れた百味ビーンズや蛙チョコレートなど、カラフルで不思議なお菓子を楽しみながらおしゃべりをしたり、ネビルがペットのヒキガエルをなくしてしまったり、ハーマイオニーが突然現れてハリーの眼鏡を修理したり......。そんな、賑やかで楽しいホグワーツ特急の旅を夢見る人は少なくないでしょう。
ジャコバイト蒸気機関車
実は、憧れのホグワーツ特急の旅をスコットランドで体験することができます。映画でホグワーツ特急として使用された実際の列車は、スコットランドの「ジャコバイト蒸気機関車」であり、この実際の列車の旅は、「世界で最も偉大な鉄道の旅」と評されるほどの人気を誇っています。
ジャコバイト号は1984年から毎年夏シーズンに運行されており、現在はウェスト・コースト鉄道が運営しています。スコットランドのウェスト・ハイランド・ラインを走るこの列車の旅は、スコットランドの伝承、豪華な旅、美しい景色が融合し、毎年多くの観光客を魅了しています。
映画『ハリー・ポッター』シリーズに登場する美しいスコットランドの田園風景や素晴らしい自然の景色のいくつかは、ジャコバイト号での実際の旅から採用されたものです。数々の印象的なシーンが、ジャコバイト号とその周辺で撮影されました。
ジャコバイト号で巡るハイランドの素敵な町々
ジャコバイト号は、英国最高峰のベン・ネヴィス付近を出発し、英国本土で最も西に位置する鉄道駅アリセイグを訪れ、英国で最も深い淡水湖・モラー湖と、最も短い川・モラー川の近くを通り、最後にヨーロッパで最も深い海水湖・ネヴィス湖に到着します。このセクションでは、実際のジャコバイト号のルートをたどりながら、ハイランド地方の素敵な町を旅していきましょう。
フォート・ウィリアム (Fort William)
'Fort William'. VisitScotland / Kenny Lam
ジャコバイト号の往復84マイルの旅は、フォート・ウィリアム鉄道駅を出発点にしています。フォート・ウィリアムは西ハイランド地方に位置し、「英国のアウトドアの首都」として知られ、週末休暇やホリデーの拠点として人気があります。この町は、世界有数の美しいビーチから、一面に広がる丘、城、さらにはウィスキー蒸留所など、魅力に溢れています。
グレンフィナン (Glenfinnan)
グレンフィナン高架橋は、ハリー・ポッターファンにとってこの鉄道の旅で最も重要なポイントです。映画のいくつかの有名なシーンが、この場所で撮影されました。
特に、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では、ハリーとロンが空飛ぶフォード・アングリアでホグワーツ特急に追いつこうとする（実際は追いつかれる）場面があり、グレンフィナン高架橋の姿がよく見られます。ホグワーツ特急が、大自然をバックに大きなアーチ状の高架橋を走る様子はとても印象的です。
グレンフィナン高架橋は、スコットランド最長のコンクリート鉄道橋です。1890年代に「コンクリート・ボブ」として知られるマカルパインによって建設され、その巨大な21個のアーチは、当時先駆的だった技術で造られました。この高架橋は、ウェスト・ハイランド鉄道を約30メートル下のフィナン川に架けるもので、「世界で最も絵になる鉄道」のひとつだと評されています。
筆者撮影：グレンフィナン高架橋（2019年2月）
列車はグレンフィナン高架橋の上で一時停止または減速するので、乗客は車窓からの壮大な眺めを堪能できるそうです。グレンフィナン駅に停車後は、乗客は足を伸ばし、希望すれば復元された駅舎内にあるウェスト・ハイランド鉄道博物館を見学することもできます。
筆者撮影：シール湖（2019年2月）
グレンフィナン高架橋の目の前には、スコットランドで4番目に長い湖、シール湖の壮大なパノラマが広がっています。この湖は氷河期以降に形成され、クロツグミやイヌワシなど多様な鳥類が生息することから、特別保護区に指定されています。シール湖は、映画ハリー・ポッターシリーズのホグワーツの湖としても登場します。
アリセイグ (Arisaig)
'Arisaig'. VisitScotland / Kenny Lam
Loch nan Ceall（湖）の畔に位置するアリセイグは、素晴らしい景色が広がる美しい村です。白壁の建物が美しく、モラール半島の入り江に位置しています。
岩の多い海岸、青い海、白い砂が特徴的な景観で、自然豊かな美しい田園地帯を探索する最適な場所となっています。特に夕暮れ時の景色は息を呑むほど美しく、ラム島やエッグ島まで見渡せます。
マレイグ (Mallaig)
'Mallaig'. VisitScotland / Paul Tomkinsジャコバイト号の終点はマレイグです。賑やかで繁栄しているマレイグの港は、有名な「ロード・トゥ・ザ・アイルズ」沿いの北西海岸に位置しています。現役の漁港の雰囲気に浸れる魅力的な町であると同時に、人里離れた場所にあるためリラックスするには最適な場所です。
現在、マレイグは賑やかな漁港であるとともに、スカイ島やノイダート半島へのフェリー・ターミナルとしても機能しています。また、風光明媚なワイルドライフ・クルーズを体験したり、パブでフィッシュ＆チップスを楽しめます。
おわりに
'Glenfinnan Viaduct'. VisitScotland / Airborne Lens今回は、ジャコバイト号に乗り込んでスコットランド・ハイランドの魅力を巡る魔法の旅をお届けしました。スコットランドの美しい街並みは歴史に彩られ、壮大な自然が織りなす絶景と人々の温かさが、訪れる人々をまるで魔法にかけるかのように魅了します。
この記事が、私、M.I.が担当したハリー・ポッター記事シリーズのラストを飾る最終稿です。ハリー・ポッターの世界を通じて、スコットランドの魅力をたくさん感じていただけたなら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました！
参考文献
'The Jacobite'. West Coast Railways
Hogwarts Express. West Coast Railways.
The World-Famous Jacobite Express Train. The Jacobite Trail.
The Jacobite Steam Train. Visit Scotland.
'Viaduct'. National Trust for Scotland
'5 beautiful Scottish lochs you didn't know were featured in the Harry Potter films'. Country Living
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