「留学体験記」University of Glasgow, MSc Sustainable Tourism and Global Challenges, WTさん
1.受験準備について
大学院受験を決めたのは、2023年の春でした。
大学卒業後観光業に8年間携わり、30歳という節目の歳を迎えたこともあり、新しいことに挑戦し、観光に関する知識をさらに深めたいという思いがありました。業務の中で観光や地方創生に関心のある様々な学生と関わる機会も多く、観光を体系的に学び、自身の業務に活かしたいというのが大学院留学のきっかけでした。学部時代に交換留学生として英国で学んだ経験があったこと、1年で修士号を取得できることからイギリスを留学先として選択しました。
受験準備としては、主に2点のみでした。学部時代の指導教授に推薦状執筆を依頼することと、IELTSの有効期限が切れていたため再受験が必要でした。その他学部時代の成績表と卒業証明書の提出が必要でした。CAS発行にあたってシェフィールド大学留学時の入学許可メールが必要だったため、以前の留学中の資料探しに思いの外時間がかかりました。
2023年の11月3日に応募書類を提出し、11月14日に条件付き合格通知が届きました。日本語での大学卒業証明証等いくつか追加で事務的な書類の提出を求められ、それらをまとめて追加提出後、11月16日に正式な合格通知が届きました。
2.グラスゴー大学を選んだ理由
イギリスで持続可能な観光学が学べる学部をネットで検索しているとサリー大学, エセックス大学と共にグラスゴー大学が上位に出てきました。中でもグラスゴー大学はダンフリースという田舎町にキャンパスを構え、地域コミュニティと近い環境で観光を学べること、世界大学ランキングが100位以内であること、スコットランドという学部時代に学んだイングランドとは異なる文化に触れられることなどから、グラスゴー大学を選びました。
私と同じ学部に留学されていた方のJSAの留学体験記も参考にしました。

3.留学後の生活について
ダンフリースは田舎町であることは合格通知に記載されていたのでわかってはいたものの、現地のキャンパスを訪れると想像していたよりもかなりコンパクトなキャンパス且つ、寮からキャンパスまでのバスは1時間に1本しかなく最終バスは17:00という事実を知りやや戸惑ったというのが正直な最初の印象でした。
大学図書館は17:00で閉館し、日曜日は休館、面積もかなり狭いです。しかし、メインキャンパスの本の取り寄せはやや時間はかかるものの利用可能で、ほとんどの本はオンラインで読めるので、学習において大きな支障はありませんでした。ダンフリースキャンパスには学部生、院生合わせて500人程度の学生しかおらず、学内で部活動が盛んなわけでもないため、キャンパスで学生をあまり見かけることはなく、一般的な"大学生感"を感じられるキャンパスライフは送ることはありませんでした。

しかし、小さなキャンパスであったため、教員との距離感が近く、授業時間外でも授業以外の話しをしたり、課題の相談をしたりできたことは利点だと言えます。また、遊ぶ場所や部活動も限られているので、勉強に集中するにはとても良い環境でした。学生数が少ないため、他学部の学生や学部生とも友達になれたことも良い経験でした。
私が暮らしていた学生寮はScotlrailの駅から徒歩約20分、大学行きの最寄りバス停まで徒歩約20分、一番近いスーパーまで徒歩約20分という位置にあり、一軒家を改装した女子寮でした。日当たりがとてもよく、部屋も広く、最初に部屋の扉を開けた時に感動したのを覚えています。ルームメイトはインドネシア、中国、スコットランドから来ている大学院生でした。一緒に課題に取り組んだり、他の寮の学生を招いてホームパーティーをしたり、一緒にオーロラを見たりと学生寮ではたくさんの思い出を作ることができました。

一番近いスーパーまで徒歩で往復40分かかるので、食材はスーパーの宅配サービスを利用して済ませることもありました。私は学生寮契約前に3月末にキャンパスでの全ての授業が終了することを知らず、ひとまず6月までの契約期間を選択しましたが、今思えば、3月までの契約期間を選択し、グラスゴーに引っ越して、メインキャンパスの図書館や自習室で修論執筆を進めるという選択が賢明だったように感じます。学生寮の契約期間終了後はSpareroomというアプリを利用して、学生寮を探し、月£500 (Wi-Fi、光熱費、税込)の寮に5月中旬から引っ越しました。学生寮に滞在していた9割以上の学生が6月の契約期間終了後グラスゴーに引っ越していました。
学生寮詳細については下記URLが参考になります。
https://www.gla.ac.uk/undergraduate/accommodation/residenceprofiles/laurieknowehall/
4.授業や周りの留学生について
授業は週に3日程度しかなく、その他の時間はリーディングや自習の時間に充てることになります。1学期と2学期の1週間の授業時間割をまとめてみました。
私のMSc Sustainable Tourism and Global Challengesは必修授業(修論指導含む)が6コマと選択授業が1コマの合計7科目を履修します。1学期の時間割があまりにも余裕があったため、2学期は聴講生として1科目余分に履修しました。
1学期(9~12月)履修授業(合計50単位)
Circular Tourism (20単位)
評価:3000ワードのレポート(70%)と口頭プレゼンテーション(30%)
Wildlife Tourism (20単位)
評価:2500ワードのレポート(80%)とオンラインテスト(20%)
Sustainable Tourism (10単位/※オンデマンド授業)
評価:1500ワードのレポート(100%)
※授業動画とリーディングリストがオンライン上にアップロードされるので好きな時間に履修するスタイル。Padletという教育用のオンライン掲示板アプリを用いてオンデマンド授業でありながら双方向の授業が試みられていました。


2学期(1月〜3月)履修授業(合計70単位)
Sustainable Heritage Management (20単位)
評価:3000ワードのエッセイ(80%)とポスタープレゼンテーション(20%)
Social Research Methods(20単位)
評価:1000ワードのエッセイ(20%)4500ワードのエッセイ(80%)
Leadership & Management(20単位)
評価:1500ワードのエッセイ(40%)と2500ワードのエッセイ(60%)
Technology in Tourism (10単位)
評価:1500ワードのエッセイ(80%)と500ワードのレポート(20%)
Event Management (聴講)
2学期だけで修論のワード数を優に超える量の課題が課されました。
3学期履修授業(合計60単位)
TH dissertation (60単位)
修論指導は下記構成になっていました。
3月27日に修論計画書提出→4月28日修論指導担当教員が割り当て→10時間の指導→8月29日提出。修論の字数は12,500ワードでした。
キャンパスでの授業はなく、指導教授とオンライン等で指導を受けます。
10月17日に最終成績が発表され、12月4日に卒業式が行われる予定です。
クラスメイトについてもやや予想外の展開となりました。イギリス留学を目指す多くの人は、「イギリスの大学に行けば、当然イギリス人と同じ教室で学ぶことになる」と想像しているのではないでしょうか?大学と学部選びの段階で、事前にコースの担当教授に「どの国からの留学生が多いか?」という内容でメールを送り、様々な国から学生が来ていることは確認していました。ただし、その前提には「イギリス人がマジョリティであること」が当然のようにありました。自分のコースのクラスメイトは全部で13人いたのですが、そのうち11人が中国人で、あとはメキシコ人が1人、エチオピア人が1人。そして、スコットランド人は......0人でした。教室に入ると中国語が飛び交っていて、この事実を知った瞬間、少し動揺したのを覚えています。実際、BBCでは2020年の時点で「中国人留学生が激増している」という状況を記事で取り上げており、もっと丁寧に調べていれば予測できたのかもしれませんが、「スコットランド留学=スコットランド人と学ぶ」ではないということは新たな気づきでした。
この状況は例年発生しているのか気になり、大学教務に質問したところ、国籍のバランスは選考の際考慮していないということでした。この国籍の偏りは私のコース、グラスゴー大学だけではなく、他学部やエジンバラ大学の一部でも起こっているようなので、こういった状況が発生し得るということは頭の片隅に置いておいても良いかもしれません。
5. 授業の雰囲気について
授業は講義スタイルで行われるものが多く、グループワークやディスカッションなどもありました。1コマは2時間〜3時間ほどで、途中休憩も挟みながら行われました。英語が母語の学生がいなかったため、あまり英語の間違いを気にせずに積極的に話せたり、質問できたりしたのは逆に良い機会だったように思います。授業のスライドはオンラインシステムにアップロードされてダウンロードできるようになっているので、復習する際に役立ちました。地域の観光関係者を招いてのワークショップやスコットランドで最も高い場所に位置する村へのフィールドトリップなどもあり貴重な学習機会となりました。

授業の一環ではありませんが、留学前から研究対象に据えていた、スコットランドで地域主導型観光の取り組みをサポートするScottish Community Tourism (通称SCOTO)の活動に参加できたこともスコットランドのコミュニティツーリズムを研究する上で非常に貴重な機会となりました。2022年4月に設立された新しいCIC (Community Interest Company)で、地域コミュニティと環境を第一にした観光を実現するために、スコットランドで地域住民主導型観光に取り組む地域をサポートしたり、ネットワークづくりをしたり、事例共有をしたりされています。下記写真は年次総会の様子です。経済的な利点だけでなく、社会資本を高めるための観光のあり方を追求されており、実践者のプレゼンテーションや代表者へのインタビューを通じて先駆的な事例を学ぶことができました。

6.留学前に知っておいたら良いこと
・学費も寮費も分割払いが可能で、クレジットカード支払いができるので銀行口座は開設しなくても不自由なく過ごすことができました。
・ダンフリースの駅にはタクシーは常時停まっていません。Uberも利用できません。
私は初日宿泊した宿のオーナーに教えてもらったタクシー会社に電話して配車しました。
・ダンフリースキャンパスで学ぶ場合は学生寮の契約期間は最短期間に留めて、到着してから延長を考えるのが良いと思います。
・ダンフリースの市街地にはチャリティショップがたくさんあるので、冬物の服やドレス等は£1~10程度で調達できます。
・学生寮には調理器具一式と食器、箸やカトラリー等全て揃っています。
・シャワールームの排水溝が詰まりやすいので、髪の毛が長い方は100円ショップ等に売っている金属の排水溝ネットを持参するととても役立ちます。
・現金はほとんど使う機会がありませんが、心配な場合は5000~10,000円程度両替しておくと良いでしょう。公衆トイレ等少額利用でもクレジットカードが使える場所が多いです。


