「留学体験記」University of Glasgow, School of Social & Political Sciences, SFさん
【留学に至るまでの背景】
学部時代から大学院留学に興味がありましたが、当時は漠然とした関心でとどまり、実行には至りませんでした。大学卒業後に社会人として働くなかで、ウクライナ侵攻をはじめとする国際情勢の変化が自分の生活にも影響することを実感し、世界についてより深く学びたいという思いが強まり、あらためて大学院留学に挑戦することを決めました。グラスゴー大学を選んだ理由は、スコットランドの風光明媚な景色や美しいキャンパスに惹かれたこと、そして国際関係学における高い評価です。

通学路から見えるキャンパスの姿が気に入って、しょっちゅう写真に撮っていました

グラスゴー大学の歴史を感じさせる美しいキャンパスです
【英語学習について】
長期間英語学習から離れていたため、まず参考書を通読して基礎を確認し、そのうえでIELTSを受験しました。初回はOverall 6.0で、特にスピーキングとライティングにはIELTS特有の対策が必要だと感じ、参考書やYouTubeを活用して回答の型やフレーズを学び、出願前に再受験して申請可能なスコアを取得しました。
留学後は日常生活や課題を通して実践的な英語力を鍛えました。特に最初はスコットランド訛りに苦労しましたが、大学近くのドーナツ屋に通ううちに店員さんや他のお客さんと短い会話ができるようになり、成長を実感しました。クラスは多国籍で、インド・中国出身の学生が多く、自分の不完全な英語でも挑戦しやすい環境でした。
授業はレクチャーとディスカッション形式のセミナーで構成されており、セミナーでは「完璧に話さなければ」というプレッシャーから発言をためらうことが多くありました。しかし、事前に発言内容のメモを作成し、毎回「最低一度は発言する」と決めて臨むことで、勇気を出す大切さを学びました。
【授業と年間スケジュール】
MSc International Relationsは1年制で、9〜12月、1〜3月の授業期間と、4〜9月の修論執筆期間で構成されています。授業期間中はオフィスアワーがあり、教授に直接相談することができます。日本の大学ではほとんど経験のない文化で戸惑いもありましたが、授業で疑問に思ったことの質問や、エッセイ構成に関する相談、修論テーマに関する文献などの助言を得られ、大きな支えになりました。
〈1セメスター(9〜12月上旬)〉
・履修:必修2科目+選択1科目
・形式:各科目はレクチャー1時間+セミナー1時間、授業は月〜水
・準備:毎週のリーディングと議論準備が欠かせない
・課題:10月下旬と1月上旬に各2,500字程度のエッセイ
・リーディングウィーク:4週目に授業休止週
特に大変だったのが、必修のリサーチデザインの授業です。この授業では、リサーチアプローチ(存在論・経験論)、量的分析、プロセストレーシングなど、修論作成に必要な研究手法を学びました。当時は修論テーマが未定で、リサーチデザインという科目自体も初めてだったため、予習復習、課題への取り組み方など大いに苦戦しました。しかし振り返ると、ここで学んだ基礎知識が修論執筆に非常に役立ちました。
〈2セメスター(1〜3月)〉
・履修:自由選択3科目
・課題:2月と4月にエッセイ提出
・特別イベント:4月のブリュッセルトリップでは、EU機関を訪問し政策担当者の話を聞く機会が得られました。理論と現実が結びつく貴重な経験でした。
〈修論期間(4〜9月)〉
授業はなく、月1回のスーパーバイザー面談が中心です。私は寮にこもって執筆する日が多かったものの、「息抜きも学びの一部」と助言され、湖水地方への旅行やクラスメイトとの食事が良い気分転換となりました。
【留学生活について】
私は安全面と手続きのしやすさから大学寮を選びました。院生向けの静かな寮で、部屋はエンスイート、キッチンは共用です。快適ではあるものの、冬はラディエーターの稼働時間が限られており、湯たんぽが必須でした。共用スペースでは掃除やゴミ捨てについて自分たちでルールを決めるため、「気づいた人がやる」という暗黙の期待は機能せず、必要な場面では自分から意見を伝えることが大切だと学びました。また、洗濯は外のランドリー棟まで行く必要があり、毎回5ポンドほどかかるため、週1回にまとめて行っていました。
円安のインパクトについては、留学生活を通じ190〜200円前後が続きましたが、日常品の購入で細かい為替変動を気にしても仕方がないと思い、割り切るようにしました。自炊中心の生活で、にんじんやじゃがいもが1〜2kgで1ポンド未満と安く、野菜スープをよく作りました。大学周辺にはカフェが多く、今振り返るともっと訪れておけばよかったと感じています。
グラスゴーにはアジアンマーケットが多く、醤油や韓国麺、こんにゃくなども手に入り、日本食が恋しいときに助けられました。
【周囲の留学生と授業の雰囲気】
クラスは約40名で、中国人・インド人が半数、日本人は3名でした。学部から直接進学した学生が5割、社会人経験を経て来た学生や50代の学生もおり、多様な視点に触れられました。出席点はなく、評価はエッセイが中心で、教授からのフィードバックを通じて論の組み立てを改善できました。
【留学生活の息抜き】
勉強の合間にはグラスゴー市内の散策や、スコットランド各地を訪れました。エディンバラの街並みはグラスゴーとはまた雰囲気が異なり、中世のような素敵な街でした。アバディーンでは花崗岩の街並みと「Mackie's 19.2」というスコットランドで有名なアイスクリームを満喫しました。大学主催のバスツアーで訪れたセントアンドリュース、冬のハイランド地方、アラン島やビュート島など、いずれも良いリフレッシュになりました。

クラスメイトに勧められた「Mary's Milk Bar」のアイスクリーム
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