「留学体験記」The Glasgow School of Art、KOさん

皆さん、こんにちは!日本スコットランド交流協会です。
スコットランドへ留学をされたJSA奨学生のKOさんよりレポートを頂きました!

〈目次〉
・留学先の大学院から現在まで
・グラスゴーでの生活
・大学、授業、クラスメートについて
・休暇の過ごし方
・留学後のイギリスでの就職活動
・留学に行く前に知っておくと良いこと
・最後に


留学先の大学院から現在まで

2021年の9月から1年間、イギリスのスコットランドにある大学、The Glasgow School of ArtにてMDes in Design Innovation and Service Designというコースにてサービスデザインの勉強をし、2022年の9月に卒業をしました。
スコットランドでの生活、大学院、そして海外での就職活動を経て、現在はロンドンのデザインコンサル会社にてUser Researcherとして働いています。
イギリスに来て2年が経った今、改めてここまでの道のりを振り返るタイミングで体験談執筆のお話を頂き、筆を握ることとしました。この体験談を通して、グラスゴーでの生活や大学生活、就職活動、留学に行く前に知っておくと良いことなどご紹介できればと思います。
Glasgow School of Artやサービスデザイン、スコットランド留学、現地就職に興味がある方のお役に立てば幸いです。


グラスゴーでの生活

グラスゴーはスコットランドで2番目に大きい都市です。イングランドとはまた少し異なる文化や歴史があります。
スコットランドで有名なものといえば、キルト、バグパイプ、ハギス、ウィスキー、ハイランドカウなどでしょうか。少しマイナーのものもご紹介しますと、ディープフライドマーズバーというチョコレートバーを揚げた物(Fish&Chipsのお店で買えたりします)やTennentというスコットランドのビールなどもあります。
生活に密接したところでいう一番の違いは、天気と言えるでしょう。イギリスはそもそも曇りの日が多いことで有名ですが、やはりスコットランドも曇りや小雨の日が多く続きます。夏は日が長く、涼しくて心地の良い時間を過ごせますが、秋から春にかけては小雨や曇りの日も多く、真冬は3時頃には暗くなり、朝は9時半頃まで暗いのです。冬になったらビタミンDのサプリは必須です。その分晴れた日はとても気持ちよく過ごすことができます。
グラスゴーにはマッキントッシュが建築したティールームや美術館などがあり、ティールームではアフタヌーンティーを楽しむことができます。The Glasgow School of Artもマッキントッシュの最高傑作と言われた建物だったのですが、2018年に火事で燃えてしまい、私が行った時には工事中となっていました。ただ、他の建物はまだ残っているのでグラスゴーに行く機会があれば訪れる価値はあります。他にはケルビングローブパークという大きな公園が大学の近くにあります。公園の中にはCOP26の会場となった美術館もあります。サウスサイドにはクイーンズパークという公園やポロックカウントリーパークという公園の中に美術館がある森のような公園もあり、緑が多い都市だと言えるでしょう。少し中心地からは離れてしまいますが、ハイランドカウがいたり、美術館があったりするポロックカントリーパークは個人的にかなりおすすめでお気に入りの場所です。
スコットランド最大の都市であるエジンバラには、電車やバスで1時間ほどでいけてしますので、ちょっとしたお出かけ気分や日帰りで訪れることもできます。実際エジンバラやダンディーなどの隣の都市から通学しているクラスメートもいました。
異なる英語のアクセントやスコットランドの人のフレンドリーな性格、山や川などの大自然などスコットランドにはイングランドは異なる魅力があります。初めの頃はグラスゴーのアクセントに慣れず、聞き取りに苦労したのも今では良い思い出です。
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エジンバラ、スコットランドカウ、ティールーム(マッキントッシュ)

大学、授業、クラスメートについて

私が勉強したコースはサービスデザインを学ぶコースだったこともあり、クラスメートとはかなり密に接していました。授業は個別でレポートを書くものも少しありましたが、ほとんどがグループワークでした。具体的には3−4人のグループで与えられたブリーフをもとにリサーチを進め、インサイトを見出し、アイデアをプレゼンするということを多く行いました。最後の修士論文だけは個人作業でしたが、それもグループで進捗を共有しあって進めていました。クラスメートも人好きで思いやりのある人が多く、学校生活もプライベートも彼らとは共に多くの時間を過ごしました。
授業外では、ハロウィンパーティーやバースデーパーティー、クリスマスパーティー、スコットランドのお祝いであるバーンズナイトなど、何かと誰かの寮のパーティールームに集まってはパーティーが行われていました。またインド人や中国人を含め、アメリカ、イタリア、ベルギー、モンゴルなど世界各国からクラスメイトが来ていたため、スコットランドのお祝いだけでなく、インドのディワリやメキシコの死者の日などを一緒にお祝いしたりもしました。また、コースの方向性としてデザインを通して社会問題に対してインパクトを与えることを目的としていたからなのか、複雑なバックグラウンドをもつ学生も多くいました(多様な国で子供時代を過ごした、両親が異なる国の出身など)。他の大学院のコースではなかなかここまで多種多様なバックグラウンドのクラスメートと密に仲良くなることもないのではないかと思います。これはサービスデザイン系のコースならではなのではないでしょうか。1年間苦楽を共にした彼らとは今でも良い仲間となっています。
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卒展、ハロウィンパーティー

休暇の過ごし方

私のコースは1年間のコースだったこともあり、なかなか長期での休暇は取れませんでした。それでもクリスマスや夏などところどころ2−3週間ほど休みが取れる機会があったり、リモートでの授業参加などができる環境が少なからずあったので(もちろん事前に教授に確認はしていました)、休暇中はイタリアやニューヨークに旅行に行ったりしていました。グラスゴーとエジンバラには空港があり、それぞれバスや電車で30分〜1時間ほどの距離なので、かなり気軽にヨーロッパ旅行には行けてしまいます。
夏にはスコットランドのさらに北の方にもクラスメイトとグランピングをしに行きました。ハイキングやキャンプ体験は今でもとても良い思い出です。
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ハイランド、イタリア(Loretoの大聖堂Basilica della Santa Casa)、ミラノサローネ

留学後のイギリスでの就職活動

大学を卒業した後は現地就職を目指し就職活動を行いました。実際就職するのに6ヶ月ほどかかってしまいましたが、現地就職を考えてる皆さんに少しでもお役に立つ情報をお伝えできればと思います。
まず、現地就職で一番大切なのは「英語でのその職種での仕事体験があるかどうか」です。私の場合、仕事の体験はありましたが、英語で仕事をした経験がなかった部分が少しハンデとなりました。
学位以外で他に重要となってくる要素としては、ビザの有無や、書類選考通過のための対策です。
ビザに関しては大学院を卒業するとGraduate Visaというビザを得ることができます。私も現在はそのビザでイギリスで仕事をしており、近々ワークビザに切り替えることを想定しています。やはり英語での仕事経験がない人を採用することは企業としてはリスクとなるので、ビザを持っている人の方が就職活動はしやすくなるでしょう。ただし、その職種での英語での仕事経験がある場合や、政府系の仕事(NHS関連や現地のCouncilなど)であれば、ビザを発行してもらえることもあります。
書類選考に関しては、書類を見る人に対し如何に短時間で良い印象を与えるかがポイントです。どの企業も書類選考を専門に行う職業の人(リクルーター)がいるので、その人に良いと思ってもらい電話での面接をパスすることが一番大切です。リクルーターは必ずしもその職業について詳しい人というわけではないので、キーワードをスキミングして判断しています。私は書類選考のコツが分からず、初めはなかなか書類が通らず苦労しました。書類選考ではCVやカバーレターの頭の部分で仕事のスキルや経験を刺さるキーワードを混ぜながら手短に書くこと、学歴よりも関連する仕事経験や資格、スキルなどを目立つように書くことが大切です。最初の1文は誰もが目を通すので、その最初の文章で読む人を惹きつけることを意識すると良いと思います。カバーレターを含め文章はネイティブにチェックしてもらい不自然さを無くすこと、自信が伝わる文章にすることなどが必要不可欠です。また、レターヘッドをつける、CVのデザインをグラフィックデザイナーの友人に確認してもらうなどして、視覚的にも他の人との差をつけることを意識しました。
他に大切なことはネットワーキングかもしれません。私はLinkedInをを使ったり、デザイン系のスラックグループに招待してもらったり、オンラインのメンターがいるWebサイトなどを通してコネクションを増やしつつ就職の情報や働き方や仕事内容などの情報を集めたり、ポートフォリオやCVのレビューをしてもらったりしました。また、ネットワークが増えてきたところで仕事を探している旨をTwitterやLinkedInに投稿したりもしました。その投稿を通して今の企業の人からメッセージをもらうことができ(それが関係しているかは分かりませんが)、今の会社にも就職することができました。
もし現地就職を本気で目指すのであれば、インターンなどを行うことも英語での仕事経験を手にする良い手段と言えるでしょう。もちろん短い大学院生活なので、私は勉学を優先しましたが、卒業後からインターンや新卒採用枠(Graduate Schemeと呼ばれています)で働くことなども視野に入れると良いかもしれません。


留学に行く前に知っておくと良いこと

元々現地就職を見越しての留学だったので、イギリスでの就活事情について情報や、取得可能性のあるビザについてなどの知識があれば、その後の生活に役立つと言えます。
また、個人的には全く関係ないと思えた経験や知識が授業で役立ったこともあったので、その分野に明るくなくてもあまり心配はいらないのではないかと思います。ただし、日本語でその分野についての本などを読み、基礎知識があると授業の内容もより頭に入りやすくなるのではないでしょうか。
コロナ禍〜コロナ後の留学だったこともあり、Zoomでの授業が多かったことはかなり助けとなりました。私はノートの代わりにiPadを駆使していましたが、ノートの見返しなどもしやすく、ノートを取りなが録音をできるアプリなどもあったので(Good note, Notability など)、効率よく勉強しつつ、内容を記録するという面でかなり役立ちました。Z世代の学生も多いので、若い人たちからもいろいろ教えてもらったりもしていました。
他には簡単なビデオ編集の技術やProcreateなどが少し使えると役立つかもしれません。私は現地についてから学びましたし、無くても他にできる人がいるので大丈夫ではあります。


最後に

社会人を経験してからの留学は私にとってかなり大きな決断でした。元々海外に行きたいという思いはあったものの、仕事や日本での生活、金銭面の不安などがあり、なかなか踏み切れずにいました。しかしながら、20代のうちにやりたいと思っていたことをやり切ろうという強い思い、そして日本での仕事経験が自信となり、海外留学、そして就職に踏み切りました。仕事が見つからずに過ごした年末は、心細く過ごしていましたが、諦めずに行動を続けた結果、無事希望の職種に就くことができロンドンで生活することができています。まだまだチャレンジは多くありますが、しばらくはこのままこちらでの生活を続けていけたらと考えています。イギリスといえばロンドンなどが主要な留学先となっている中、異なる文化のスコットランドに留学することができたのは、私の人生においても貴重な経験となりました。この留学を後押しし、サポートしてくださった皆様には深く感謝しています。この体験記を通して少しでも誰かの留学に踏み切るきっかけや励ましとなれば幸いです。


最後までお読みいただきありがとうございました。スコットランドでの留学について少しイメージが湧いてきましたでしょうか?本年度の募集はしばらくお待ち下さい。ご不明点はscholarship@jpn-scot.org (スコットランドの修士課程留学奨学金係)までお気軽にご連絡ください。お待ちしています!