「留学体験記」エディンバラ大学修士課程
2021年度JSA奨学生のM.I.と申します。2022年11月にエディンバラ大学で歴史学の修士課程を修了いたしました。(The University of Edinburgh, MSc History) 今回は、エディンバラでの経験や学びについて、筆写撮影の写真とともにお話ししたいと思います!
〈目次〉
・留学の動機・背景
・大学院生活
・受講したモジュールの例
・セメスター期間中の学習例
・修士論文
・課外活動
・現在と今後について
留学の動機・背景
私は岐阜県の小さな町で生まれ育ち、海外とはあまり接点のない生活を送っていました。しかし、幼い頃から国内外の文化に興味があり、本を読んだり「世界ふしぎ発見」を観たりして、様々な文化に触れることが好きでした。
そのため、海外とのコネクションや英語教育に強みを持つ南山大学の英米学科に進学しました。南山大学では、人文学を学際的に学び、「常識」に疑問を持つ、クリティカルな態度を養いました。また、英国歴史学のゼミに所属し、17世紀から19世紀の英国における茶の「エキゾティックネス」が、「アジア」に対する態度の変遷をどのように示唆しているのかを研究しました。
実は、私はエディンバラ大学に2回留学しています。1度目は学部時代に交換留学生として、2度目は修士学生としてです。
エディンバラを交換留学先として選んだ理由は4つあります。
南山大学卒業後は、社会の仕組みについてより深く研究したいと考え、修士学課程に進学することにしました。エディンバラに魅了された私が、歴史学で特に有名なエディンバラ大学を選んだのはごく自然なことでした。
大学院生活
日本やアメリカの修士課程は2年間が多いのですが、英国は1年間のプログラムが多く、2年分の内容を1年間に詰め込むので、週末も含めて勉強漬けの毎日でした。忙しさで心身ともに疲弊することも多かったのですが、フラットメイトや友人とお互いに励まし合いながら何とか学修を全うしました。
エディンバラの歴史学修士プログラムは、ディスカッションベースのセミナーと修士論文の2部構成でした。セミナーは、古代から現代まで、様々なトピックや地域から選択できました。私の学問的関心の根底にあるのは「社会がある出来事や集団をどのように認識し、その認識がどのように変化していくのか」というものであり、これをセミナー選択と研究の軸としていました。
受講したモジュールの例エディンバラでの生活は、ほぼ学業に費やしていました。購読量、コースワークが非常に多く、論文執筆などで締め切りに追われない日はありませんでした。私は非ネイティブスピーカーであり、欧米圏で教育を受けたクラスメイトが当たり前に持っている予備知識がないことも、大きなハンディキャップでした。また、歴史学はレトリックを多用する傾向もあり、第1セメスターでは、ディスカッションに貢献できなかったり、自分の理解力や思考力がクラスメイトと比べて浅いのではないかと、随分悩みました。
しかし、積極的に教授に質問し、比較的ファミリアなモジュール選択を行い、セミナー準備のコツを掴んだ結果、第2セメスターからは毎回多くの発言ができるようになりました。また、あるモジュールでは、プレゼンテーション、ディスカッションリーディング、論文の評価でディスティンクションを取ることもできました。最終的には、Award of MSc Meritの成績でプログラムを無事修了することができました。
修士論文
タイトルは、Orientalism in the Representation of Japan: Kaempfer's the History of Japan in Eighteenth-century Europeです。エンゲルベルト・ケンペル の「日本誌」(1727)をプライマリーソースとして使用しました。
現在、'race' (人種)という概念は、主に外見に基づいて人々を分類する確固たる方法として一般的に認識されているように思われます。しかし、この概念は「長い18世紀」のヨーロッパで、分類学が発展していく中で確立されたものだと考えられています。それ以前は、宗教的や文化的な人間同士の違いは認められていたものの、それほどまでに体系的な区分は作られていませんでした。
近世は世界中の人々や物事がかつてないほど複雑に絡み合うようになった時代です。そのため、ヨーロッパの知識人と交わった人々や事象が、「人種」の概念化のプロセスに寄与した可能性があります。そこで、ヨーロッパから見たイメージとしての「オリエント」に注目し、エドワード・サイードの「オリエンタリズム」の基本的なフレームワークを、「長い18世紀」における日本とヨーロッパの関係に適用しました。そして、近世ヨーロッパにおける日本の表象が、当時のオリエンタリズムの言説をどの程度反映していたのか、またそれが18世紀ヨーロッパにおける「人種」概念の形成に寄与していた可能性を探りました。
課外活動
一日中室内で引きこもって勉強してしまうことを避けるため、意識的に課外活動の時間を作り、適度な運動や気分転換ができるように心がけていました。
私は、Mylnes Courtという17世紀に最初に建てられた寮で、アメリカ、イングランド、ノルウェイ出身の4人のフラットメイトと共同生活をしていました。ハロウィーンやポットラックなど寮全体のイベントもあり、他のフラットの人とも仲良くなる機会が多くありました。私は、表千家茶道を長年嗜んでおり、日本から持参した茶道具を使って、友人やフラットメイトと定期的にお茶会をして楽しんでいました。
私はケイリー (スコットランドの伝統的なソーシャルダンス) が大好きで、時間を見つけては友人を誘って参加していました。また、スウィングダンス、スコティッシュダンス、茶、ヒストリーのソサイエティにも所属し、イベントや様々な人との交流を楽しみました。大学の多くのソサイエティはカジュアルな活動形式なので、毎回参加しなければいけないというプレッシャーもなく、自分の都合が合う時だけ自由に参加することができます。
エディンバラはいつも賑やかで活気に満ち溢れています。旧市街・新市街が世界遺産に登録されており、散歩するだけでも美しい景色を楽しむことができます。コンパクトな街なので、大体徒歩でどこへでも行くことができます。カフェやパブで友人とおしゃべりしたり、クリスマスマーケットやフリンジに行くこともありました。
現在と今後
エディンバラでの経験は、私の思考力を向上させただけでなく、様々な国、分野、世代のインテレクチュアルズと交流したことで、世界の捉え方や自分自身との向き合い方に大きな影響を与えました。私は、文化的に豊かで、個人がカテゴリーで判断されない、持続可能な世界の構築に貢献したいと考えています。
私は、過去を振り返ることは、未来を見つめることだと考えています。歴史学は、過去の人々の生活や考え方を学ぶことで、現在がどのように構築されたのかを理解し、未来に向けより良い社会を築くための洞察を得ることができるという点で、サステイナビリティの本質的な考え方と共鳴しています。
私は現在、サステイナビリティに特化したウェブマガジン「IDEAS FOR GOOD」で編集者兼ライターを務めています。(Author Page)「コンストラクティブジャーナリズム」と呼ばれるアプローチを使い、問題の説明だけでなく、その背景を探り、改善・解決する可能性のある取り組みやアイデアに焦点を当て、情報発信をしています。また、主にソーシャルエンタープライズやミュージアム、ジャーナリズムの分野で、英国内で職探しも行っているところです。
修士課程での1年間は辛いことも多かったですが、その分学び、成長できたと感じています。また、エディンバラという本当に素敵な街で、これほどまでに勉強に没頭し、生涯の友人を作ることができたことは、何ものにも代え難い貴重な経験です。私の留学を支えてくださった全ての方々に感謝いたします。
最後までお読みいただきありがとうございます。スコットランド留学がどのようなものか、少しでもご理解いただけたなら幸いです。本年度の奨学金申請の詳細については、続報をお待ちください。ご不明点はscholarship@jpn-scot.org (スコットランドの修士課程留学奨学金係)までお気軽にお問い合わせください。
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