select language

News
Events
Reports
Member's Activities
Scotland academic information
Newsletter

「留学体験記」University of Edinburgh, MSc Accounting and Finance 、YIさん

08.Dec.2023 

皆さん、こんにちは!日本スコットランド交流協会です。
スコットランドへ留学をされたJSA奨学生のYIさんよりレポートを頂きました!
本年度は、最後の留学体験記となります。

〈目次〉
・自己紹介
・コースの全体像
・休暇の過ごし方
・留学後の進路
・最後に


自己紹介
 私は兵庫県で生まれ育ち、大学からは関東で一人暮らしをしていました。大学2年生になって交換留学に挑戦しようと思いましたが、コロナ禍で断念せざるを得ませんでした。ただ、留学したいという思いは捨てきれず、大学院留学を決意しました。学部時代に会計学のゼミに参加していたことから、会計学を研究できる大学院のコースを選択しました。2022年9月から2023年8月までThe University of Edinburgh Business School で MSc Accounting and Financeを専攻していました。現在は、大学院で学んだことを活かして米国公認会計士試験の勉強をしており、2024年4月に監査法人に入社しリスクアドバイザリー業務に携わる予定です。


コースの全体像
 授業は1セメに必修科目が4つ、2セメに必修科目2つ選択科目2つの合計8科目で構成されていました。また、3セメでは修士論文を提出しました。私が入学する前年まではコロナの影響でオンライン授業が中心で、私の入学年から対面に切り替わったそうです。教授陣も授業方法をどうやって対面に切り替えていくか試行錯誤しているようでした。
 基本的な授業の方法は、授業前にPDFが送られてくるのでそれらを予習して授業に臨みます。会計科目では週に1回講義が行われていましたが、統計学やファイナンスでは、一般的な講義と問題演習を行う授業が週に2回行われました。海外の大学では授業でグループディスカッションが頻繁に行われると聞いていましたが、私の専攻では1つの授業しかディスカッションのスタイルが採用されておらず、少ない印象を受けました。ただその分、専門性の高い内容についてじっくり理解する機会や、統計ツールを使いこなせるようになるための問題演習の機会が豊富に与えられたと感じています。
 コースメイトの国籍別の割合は、半数が中国人、四分の一がインド人、残りが東南アジアなど他の国籍でした。イギリス人はコースに一人だけ在籍していました。

以下は履修した科目の詳細と成績評価方法です。

 第1セメスター(9月~12月)
・Advanced Management Accounting
企業内の資金繰りを扱う管理会計に関する授業です。唯一グループディスカッションが行われた科目です。授業の最後にランダムに選ばれたグループがプレゼンを行うことになっていました。予習量が最も多く、グループの議論についていくだけでも骨が折れます。自分の意見をしっかりとサポートして採用してもらうには相当な予習は必要でした。一方で、成績は1500 wordsの期末レポートのみで評価され、そのテーマは「国際統合報告フレームワークが持続可能性の観点から企業にどのような価値を提供しうるのか」でした。
・Advanced International Financial Reporting
国際財務報告基準いわゆるIFRSについての授業です。国際的な会計基準の統一化が昨今図られていますが、IFRSが実務的問題に対処できているのかについて理解を深めました。また、国際会計基準審議会(IASB)の立ち上げに大きく貢献した初代会長のDavid Tweedie氏がゲストとして講演してくださりました。さすが世界トップレベルの教育を提供しているエディンバラ大学だと、その講師のレベルの高さを実感しました。成績は、中間レポート(1000 words)と期末レポート(2000 words)で評価されました。中間レポートではIASBの会議の要約と評価、期末レポートではIFRSの重要テーマである無形資産に関する先行研究をレビューしました。
・Foundations of Finance Theory
金融市場の基本原則および資産の評価と取引の方法について学びました。ファイナンスは学部時代にあまり学習を進めていなかったので、講義についていくのが大変でした。成績は中間レポート(1500 words)と期末テストで評価されました。中間レポートでは、現在の金融市場で最適なポートフォリオを自分で考案しました。期末テストでは、金融理論に関する論述問題を問われました。
・Statistics for Finance
ファイナンスを理解するうえで必要な統計学について学習し、実証研究を行ううえで必要な計量経済ソフトウェアSTATAの扱い方も習得しました。多くの学生が修士論文で株価等の分析のためにSTATAを使用しており、研究において最も重要な科目でした。成績は中間テストと期末テストで評価されました。関数電卓を用いた計算問題や記述問題が問われました。私は大学で統計学を勉強していて多少アドバンテージがあり助かりましたが、数名の学生は単位を落としているようでした。
 

 第2セメスター(1月~4月)
・Current Issues in Accounting
昨今直面している会計の研究課題と実務課題について理解を深めました。会計学の分野で修士論文のテーマ探しを促進するものでした。これまで会計学の理論的側面しか見てこなかったので、実務と照らし合わせた研究は非常に興味深く多くの学びがありました。成績は授業後の振り返りレポートおよび期末レポート(4000 words)で評価されました。期末レポートでは、講義を通して自分が関心を持ったトピックを選び、複数の文献レビューを行い課題の特定、評価を行いました。
・Research in Corporate Finance
資金調達政策や配当政策、M&Aなどコーポレートファイナンスに関わる幅広い内容を学習しました。コーポレートファイナンス分野の実証研究について学ぶことで、修士論文で用いるデータ分析について理解しました。成績は期末テストおよび期末レポート(1500 words)で評価されました。期末レポートでは、講義で扱った先行研究を暗記して引用しながら記述するよう求められました。ほとんどの学生が、なぜ先行研究の研究者名や発行年を覚えなければいけかいのかと文句を言っていたのをよく覚えています。期末レポートでは、講義で扱ったテーマから関心のあるトピックを一つ選択し、複数の文献をレビューしました。
・Behavioural Finance(選択科目)
投資の意思決定や投資家の行動が心理的影響によって必ずしも合理的選択を取らないという最近話題の行動心理学について学びました。授業中に心理テストを行い自身の認知バイアスを知り、今後の投資の意思決定にどう役立てるかを議論しました。成績は期末レポート(1500 words)のみで評価されました。内容は、心理テストの結果を今後の意思決定にどう活かすかといった復習の意味合いが強いものでした。
・Equity Valuation(選択科目)
企業の財務パフォーマンスの分析方法や、企業価値評価の方法を習得しました。MSc Financeの学生も受講しており、ファイナンスの専門性がかなり高い科目でした。内容は非常に難しいものでしたが、その分最終レポートを出した時の喜びは修士論文に次いで大きかったです。成績は期末レポート(4000 words)で評価されました。企業を1つ選択し実際に企業価値評価を行いました。


 第3セメスター(5月~8月)
・修士論文
一年間の集大成です。4ヶ月という極めて短い期間で指導教員と5回程度の面談を通して論文を仕上げます。毎日朝から図書館に通って夜まで論文を書いていました。私の論文のテーマは、ESGスコアとESG論争スコアが企業リスクにどう影響するかというものでした。簡単に言うと、環境や社会に良い取り組みをしている企業と、悪影響があるのではと疑われた企業のリスクについて分析しました。文献レビューしたところ、ESGスコアと企業リスクに関する研究はこれまで広く議論されていました。しかし、高いESGスコアを持つ企業が論争に巻き込まれた際に、これまでのESGへの取り組みはリスク低下にポジティブな影響を与えるのかについて分析した論文は限られており、一般的な見立てがたっていませんでした。そこで、これをテーマに論文を書くことにしました。私の分析結果では、企業が高いESGスコアを持っていても、一度ESG論争に巻き込まれるとリスク増加は避けられないことが分かりました。


休暇の過ごし方
 イギリスの大学院は日本や他国の大学院よりも期間が短く、1年間で履修から修士論文までを終わらせなければならず、なかなかまとまった時間をとるのが困難でした。ただ冬休みやイースター休暇を使って、スコットランド周辺の散策や大学のイベントに参加しました。

・エディンバラでの生活
エディンバラでの私の好きな場所を二つ紹介しようと思います。
一つ目は、Dean Villageです。エディンバラ駅から歩いて30分程度の場所にある閑静な村です。旧新市街地とはまた一風変わった町並みでのどかで落ちついた景色を見ることができます。観光客もそれほど多くなく、小川からマイナスイオンを感じながらリラックスすることができます。気分転換したい時や静かな場所を散歩したい時などに訪れてみてください。
二つ目は、Makars Mash Barというスコットランド料理店です。ここはグーグルの口コミ数が4000件以上、スコアが4.8ポイントとかなり高評価のお店です。何店舗かスコットランド料理店を訪れましたが、ここの料理が一番美味しく、なかでもハギスは絶品です。ハギスは、羊の胃袋にミンチにした羊の内臓と玉ねぎとスパイスなどを詰め込んで茹でたスコットランドの伝統料理です。渡英直後にハギスを食べたときは、少し臭みに抵抗がありましたが、ここのハギスを何回か食べるうちにクセになりハマるようになりました。ここのハギスは牛肉を使っているためか臭みが少なく食べやすい味でした。また、小さいミニハギスがお手頃価格であるので、挑戦してみても良いと思います。他にもスコッチエッグやラムの骨付き肉など美味しいものがたくさんありました。

1DeanVillage.jpgDean Villageの街並み

2Hagis.jpg

スコットランド料理店(手前二つがミニハギス、奥は牛肩ロース)


・ロンドントレック
ロンドントレックはビジネススクールに在籍している大学院生のうち希望者が参加できる就活関連のイベントでした。ロンドンに二泊三日で滞在し、お昼と夜に一回ずつ企業訪問しました。その際、ロンドンでの働き方や仕事の探し方、生活水準などについて、エディンバラ大学のOBOGから説明を受けました。また、空き時間にはロンドン市街を散策することができました。私は日本食が恋しかったので、焼肉ライクや丸亀うどんで空き時間を過ごしていました。

・スコットランド周辺の散策
時間があるときに数回に分けて、グラスゴー、スターリング、セントアンドリュースの3箇所を旅行しました。グラスゴーはクリスマスマーケットと買い物目的で行きました。スコットランドのなかでは、最もビルが多く発展した都市だと感じました。クリスマスマーケットでは観覧車に乗りました。足場が悪く落ちるのではないかと心配しましたが、それも含めて良い体験でした。他の国と比べると日本の建物の安全性には改めて感心しました。スターリングでは、スターリング城と旧市街刑務所を観光しました。スターリング城から一望できる景色が牧歌的でエディンバラ城から見える景色とはまた違った良さがありました。刑務所では入場とツアーがセットになっていて、当時のお話をユーモアを交えて聞くことができました。イングランドからの観光客が多いからかスコティッシュアクセントが控えめで、日本人にも比較的聞き取りやすい英語を話されていました。セントアンドリュースには、ビーチを見に行きました。その時の夕焼けがとても綺麗だったので、写真を載せておきます。1月に行ったのですが、地元のアイスクリーム屋さんが非常に賑わっていました。イギリスの人は季節に関わらずアイスクリームが好きな国民性なのかなと思います。食べてみたら本当に美味しくて、氷のシャリシャリ感が全くなくミルキーでまろやかな口当たりが最高でした。エディンバラだとMary's Milk Barがおすすめですが、私はセントアンドリュースのJANNETTAS GELATERIAが一番美味しいと思ったので、これから旅行される方は行かれることをおすすめします。

3StAndrews.jpgSt. Andrewsの夕焼け

4Icecream.jpgおすすめのアイスクリーム屋さん


留学後の進路
私は留学準備と並行して就職活動を行っていました。自分が本当に大学院に合格できるか、そして英語要件を満たすことができるかが不安だったからです。大学4年次には夏のインターンに参加して、翌年の1月末に運良く内定を頂けました。実は、そのインターンは2023年3月に大学卒業予定の人たち向けで、留学に行く自分は対象外でしたが、面接や説明会で事情を話すと選考を受けさせて頂くことができました。また、大学院に受かった後は、1年間入社を遅らせてもらえました。
私のように、大学院留学に挑戦したいけれど失敗したらどうしようと不安になっている学生は、就職活動をしながら留学の事情を聞いて下さる企業を探してみてもよいかもしれません。留学中にロンキャリやボスキャリ等で就職活動をされている方も大勢いますが、学業との両立が本当に大変そうですし、何より競う相手が留学経験者同士です。個人的に、留学のために英語の勉強やそれに伴う努力をしていることをガクチカに書けるのは他の学生にはない強みだと思うので、留学前に就職活動を行う選択肢もあっていいのではないかと思います。


最後に
留学前の準備から卒業まで苦労することが多く、特に精神的に追い詰められることも多々ある一年でした。まだ私は働き始めていないので、留学の経験がどう役立ったかについては伝えることができませんが、精神的な変化に関しては強く感じています。いろいろなバックグランドを持つ人たちと交流するなかで、自分が本当は何をしたいのか、どうやって生きたいのかについてこれまで漠然としていたのが、地に足をつけて考えることができるようになったと思います。そのおかげか、自分の中に自信を持つことができるようになりました。
最後に、この留学を通して私に関わってくださった方々には深く感謝しております。この体験記が少しでもどなたかのお役に立てれば幸いです。


最後までお読みいただきありがとうございます。スコットランド留学がどのようなものか、少しでもご理解いただけたなら幸いです。本年度の奨学金申請の詳細については、続報をお待ちください。ご不明点はscholarship@jpn-scot.org (スコットランドの修士課程留学奨学金係)までお気軽にお問い合わせください。